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五反田のシンボル「TOCビル」を巡る現在の状況

施設情報

大迫 龍太郎

筆者 大迫 龍太郎

不動産キャリア6年

五反田で賃貸・売買仲介を行っているロイヤルホームの大迫です!誠実・丁寧な接客がモットーです!お気軽にご相談ください♪

【目次】

1. 五反田のシンボル「TOCビル」を巡る現在の状況


1-1. 2024年春の閉館から一転、異例の「営業再開」へ


東京・品川区の西五反田エリアにそびえ立つ「五反田TOC(東京卸売りセンター)ビル」。築50年を超え、大規模な建て替え計画に伴い2024年3月末をもって一度は完全に閉館しました。多くのテナントが退去し、昭和の薫りを残す名建築の解体工事がいよいよ始まるものと誰もが考えていました。


しかし、そのわずか数ヶ月後、所有者である株式会社テーオーシー(以下、テーオーシー)は突如として「解体計画の延期と現ビルの営業再開」を発表したのです。一度閉館した巨大ビルが、再びテナントを募集して既存の姿のまま営業を再開するという事例は、日本の不動産開発史上でも極めて異例の事態です。現在、ビル内には再びオフィスや店舗が戻りつつあり、かつての催事イベントなども順次再開されています。


1-2. 五反田エリアの居住検討者がTOCの動向を注視すべき理由


五反田エリアでのマンション購入や戸建て建築、あるいは賃貸での居住を検討している方にとって、このTOCビルの動向は単なる「古いビルのニュース」で片付けられる問題ではありません。


約21,000㎡もの広大な敷地を持つTOCビルの再開発が「いつ、どのような形で完成するか」は、周辺の地価(資産価値)、利便性、街のイメージ、形成される人口動態に決定的な影響を与えるからです。延期によって街の景色はどう変わるのか、そして五反田の不動産は買い時なのか。こうした疑問に答えるため、不動産売買の専門コンサルタントの視点から、延期の真相と未来の予測を徹底的に解説します。



2. 五反田TOCビルの歩みと「これまでの役割」


2-1. 1970年開業:日本最大級の複合商業・卸売りビルとしての誕生


五反田TOCビルは、大阪万博が開催された1970年(昭和45年)に開業しました。当時の日本は高度経済成長期の真っただ中にあり、大量生産・大量流通を支える流通拠点が求められていました。


  • 敷地面積:約21,000㎡(約6,400坪)

  • 延床面積:約174,000㎡

この圧倒的なスケールは、当時としては日本最大級の民間複合ビルでした。地下3階から地上13階(一部高層部14階)までの空間には、繊維、雑貨、食品などの卸売業者がひしめき合い、日本の流通インフラの心臓部として機能してきました。


2-2. 徳川家ゆかりの地から「五反田の顔」へ:エリアの歴史的変遷


TOCビルが建つ地は、歴史を遡ると江戸時代には旧平戸藩松浦家の下屋敷(徳川家ゆかりの広大な土地)があった場所です。近代に入り、五反田周辺は目黒川の水運を活かした製造業・町工場の街として発展しました。


その中心地に誕生したTOCビルは、五反田を「工場の街」から「商業・流通の街」へと脱皮させる起爆剤となりました。近年では、五反田エリアはITスタートアップが集積する「五反田バレー」としても知名度を上げていますが、その多様なビジネスを受け入れる土壌を作ったのは、まぎれもなく様々な企業が交差するTOCビルでした。


2-3. 催事・バーゲン・グルメ:地域住民に愛されたコミュニティ拠点


卸売りセンターとして始まったTOCですが、一般生活者にとっても欠かせない存在でした。特に有名なのが、定期的に開催されていた「徳の市」や、大手アパレル・ブランドによるファミリーセール(催事)です。週末になると五反田駅から無料のシャトルバスが運行され、数万人規模の買い物客でごった返しました。


また、地下1階の飲食店街は「昭和レトロな聖地」として親しまれ、周辺に住む住民や働くワーカーにとっての胃袋を満たす一大コミュニティ拠点となっていたのです。



3. なぜ解体・建て替え計画は動き出したのか?


3-1. 築50年超えによる老朽化と耐震性の課題


建て替え計画が持ち上がった最大の要因は、建物の「物理的寿命」です。1970年築 of TOCビルは、2020年代に入り築50年を超えました。1981年(昭和56年)に導入された「新耐震基準」より前に建てられた「旧耐震基準」の建物です。


もちろん、適切なメンテナンスや耐震補強は施されてきたものの、国土交通省の「耐震改修促進法」に基づくガイドラインや、大地震発生時の帰宅困難者受け入れ拠点としての機能を考慮すると、構造全体の抜本的な刷新(建て替え)が必要不可欠な時期に差し掛かっていたことは事実です。


3-2. 2021年に発表された「新・五反田TOCビル」の壮大なビジョン


所有者のテーオーシーは、2021年に「環境配慮型・防災機能強化型」の新しい超高層ビルへ建て替える計画を発表しました。


【当初の「新・五反田TOCビル」計画概要】構造:地上約30階、地下3階 ・高さ:約150メートル ・用途:最先端オフィス、多機能商業施設、MICE(展示場・会議室)、シェアオフィス、インキュベーション施設 ・特徴:敷地内に豊かな緑地を確保し、目黒川周辺の環境とも調和する品川区の新たなランドマーク

この計画により、五反田のポテンシャルはさらに引き上げられ、大崎や品川に匹敵する最先端ビジネス・商業エリアへと進化するはずでした。

3-3. 周辺再開発(西五反田エリア・大崎周辺)との連動性


品川区が掲げる都市計画マスタープランにおいて、五反田から大崎にかけてのエリアは「歩行者ネットワークの強化」と「業務・商業・居住機能の調和」が重要視されています。TOCビルの建て替えは、西五反田エリア全体の価値を押し上げる「最後の巨大ピース」として、不動産関係者からも強く期待されていました。



4. 【核心】五反田TOCの解体・建て替えが延期した「3つの理由」


では、なぜこれほど壮大で必要性の高かった計画が、閉館直前になって突然延期されることになったのでしょうか。その背景には、現在の日本の建設・不動産業界を取り巻く「3つの構造的課題」があります。


4-1. 理由①:建築資材の高騰とエネルギーコストの激化


延期の最も直接的な原因は、「建設コスト(工事費)の異常な暴騰」です。


国土交通省が毎月発表している「建設工事費デフレーター」(建設物価の動向を示す指標)を見ると、2021年以降、資材価格は右肩上がりで上昇し続けています。特に、ビル建築に大量に必要となる「構造用鋼材(鉄骨)」「生コンクリート」「銅線」などの価格は、ウクライナ情勢の長期化によるエネルギーコスト上昇や円安の影響を受け、当初の計画時点から1.5倍から2倍近くまで跳ね上がりました。


TOCビルのような延床面積17万㎡を超える超大型プロジェクトでは、資材価格の数十%の上昇が「数百億円規模の予算オーバー」に直結します。当初想定していた投資額での施工が不可能になったことが、計画をストップさせる最大の要因となりました。


4-2. 理由②:建設業界の「2024年問題」による深刻な人手不足と労務費上昇


2024年4月より、建設業においても働き方改革関連法に基づく「時間外労働の上限規制(年960時間)」が適用されました。これが世に言う「建設業界の2024年問題」です。


これにより、一人の職人が長時間労働で工期を挽回することが不可能となり、現場にはより多くの人員が必要となりました。しかし、日本の少子高齢化に伴い、熟練の建設作業員や施工管理技士は絶対的に不足しています。結果として、人件費(労務費)が急騰しただけでなく、「そもそも予定通りの工期で引き受けてくれるゼネコンが見つからない(または非常に高い見積もりを出される)」という事態が発生したのです。


4-3. 理由③:金利上昇リスクと世界的なインフレに伴う事業採算性の悪化


日本銀行の金融政策の変更(マイナス金利の解除および段階的な利上げ)に伴い、日本の不動産開発マネーの調達環境も変化しました。


大規模な再開発では、数千億円規模の資金を銀行団からの融資(デベロップメント・ローン)で賄うのが一般的です。金利が上昇傾向にある局面では、総金利負担額が膨れ上がります。「資材高騰で建築費が上がり、金利上昇で金融コストも上がる」というダブルパンチにより、新ビルが完成した後に得られる賃料収入(収益リターン)では投資額を回収できない、つまり「事業採算性(ROI)の悪化」が明白になってしまったのです。



5. 母体「ホテルニューオータニ(大谷グループ)」とテーオーシーの財務・経営戦略


TOCビルの延期背景を語る上で欠かせないのが、同ビルを運営する株式会社テーオーシーのバックボーンである「大谷グループ」の経営判断です。


5-2. テーオーシーとホテルニューオータニの資本・人的関係性


株式会社テーオーシーの筆頭株主などを辿ると、日本を代表する名門ホテル「ホテルニューオータニ」を展開する大谷家・大谷グループと極めて深い人的・資本的結びつきがあることが分かります。テーオーシーは東証スタンダード上場企業ですが、その経営DNAには大谷グループの手堅く、かつ長期的な資産運用手法が組み込まれています。


5-2. インバウンド復活の裏で進む、ホテルニューオータニの「選択と集中」


現在、日本国内のホテル業界はインバウンド(訪日外国人観光客)の激増により、客室単価が過去最高水準を記録するなど極めて好調です。大谷グループの本業である「ホテルニューオータニ(紀尾井町など)」も、観光・宿泊需要の恩恵をフルに受けています。


グループ全体の経営戦略として見た場合、「今、莫大なリスクを冒して建設コストがピークにある五反田のオフィスビル開発に大金を投じるよりも、好調なホテルセクターや既存資産のキャッシュフロー維持にリソースを集中させる方が合理的である」という判断が働いたことは想像に難くありません。


5-3. 「解体して更地で放置」を避けるための、現ビル営業再開という経営判断


不動産経営において、最も避けるべきなのは「キャッシュ(現金)を生まない状態で土地を遊ばせること」です。


もし、着工の目処が立たないまま予定通り解体を進めてしまっていたら、五反田の一等地に「広大な更地」が出現することになります。更地になると、「毎月数億円規模でもたらされていた賃料収入が完全にゼロになる」「固定資産税等の優遇措置のバランスが崩れる」「街の中心部が長期にわたり仮囲いで覆われエリア一帯がゴーストタウン化する」という大きなリスクを背負います。


これらを総合的に判断し、テーオーシー経営陣は「それならば、もう一度テナントを呼び戻し、現状のままビルを稼働させて毎月のキャッシュインカム(収益)を確保しながら、次のチャンス(建築費が落ち着くタイミング)を待つのが最善」という、非常にドライで合理的な選択をしたのです。



6. 五反田エリアの不動産市場への影響と今後の見通し


6-1. 現在の五反田エリアの地価・中古マンション相場の動向


TOCビルの建て替え延期が発表されたことで、「五反田の不動産価値は下落するのではないか」と不安視する声もありました。しかし、結論から言うと、五反田エリアの地価および中古マンション価格は、依然として高止まり・上昇傾向を維持しています。


国土交通省の地価公示や、東日本不動産流通機構(REINS)の市況データを見ても、城南エリア(品川区・目黒区・大田区など)の住宅需要は非常に堅調です。五反田は「JR山手線」「都営浅草線」「東急池上線」の3路線が利用できる圧倒的な交通利便性があり、共働き世帯(パワーカップル)からの支持が絶大であるため、一施設の開発延期によってエリア全体の価値が崩れるような事態にはなっていません。


6-2. TOCの「現状維持」が周辺の商業環境・賃貸需要に与えるメリット・デメリット


居住検討者にとって、TOCが現状のまま残ることには一長一短があります。


側面 メリット デメリット(近代化への影響)
商業・生活環境 ・「徳の市」や格安物販イベントが存続する ・地下の安価で個性的な飲食店街が利用できる ・生活利便施設が急に無くならない ・最先端の大型シネコンや洗練されたブランドショップなどの進出が先送りになる
オフィス・賃貸需要 ・五反田特有の「割安で広いオフィス」を求めるスタートアップの需要を吸収し続け、街の活気が保たれる ・周辺の古いビル全体の建て替え連鎖が一時的にストップし、エリア全体の近代化が遅れる

6-3. 建て替え計画はいつ再始動するのか?今後のタイムライン予測


不動産コンサルタントの視点から見ると、TOCビルの建て替え計画が完全に白紙撤回されたわけではありません。再始動のタイミングは、「建設資材価格の安定」および「2024年問題に伴うゼネコンの体制整え」が進む数年後になる可能性が高いと予測されます。


具体的には、2020年代後半から2030年頃に向けて、社会情勢を見極めながら「当初の30階建て計画の規模を少し縮小する(容積率の計画変更)」、あるいは「オフィスの比率を減らし、需要が堅調な高級賃貸レジデンス(住宅)やホテルの比率を増やす」といった設計変更を経て、再度アナウンスされるシナリオが現実的です。



7. 総括:五反田での居住を検討する方が持つべき「心構えと買い時」


7-1. TOCの延期は五反田の不動産価値を失墜させるか?(結論:NO)


この記事の結論として、五反田エリアでの物件購入を検討している方は、「TOCビルの延期を理由に見送る必要は全くない」と言えます。


五反田の本質的な価値は、山手線南側という圧倒的な立地、渋谷・恵比寿・品川へのアクセスの良さ、そして目黒川周辺の洗練された住環境にあります。TOCの再開発延期は、「街がさらに大化けする未来が数年先送りになった」というだけに過ぎません。むしろ、将来的な開発の伸びしろ(カタリスト)が将来に残されているということは、資産価値の維持・向上という観点からはポジティブに捉えることもできます。


7-2. 購入・賃貸を検討する際のエリア選びのポイント(目黒寄り vs 大崎寄り)


五反田エリアで住まいを探す際は、TOCビルのある「西五反田」側と、他の再開発エリアとの位置関係を把握することが重要です。


  • 目黒・不動前寄り(西五反田・下目黒エリア): TOCビルに近いエリアです。今回の営業再開により、当面の間は「日常使いできるレトロで便利なTOC」の恩恵を受けられます。目黒川沿いの桜並木にも近く、落ち着いた住環境と利便性を両立したいファミリー層におすすめです。

  • 大崎・品川寄り(東五反田・「ソニー通り」周辺): こちらは既に御殿山などの高級住宅街や、先進的なオフィスビルが整備されているエリアです。TOCの動向に左右されにくく、より強固な資産価値やステータス性を求める方に適しています。

五反田は、過去の「歓楽街」という古いイメージを完全に脱却し、いまや職住近接を叶えるハイエンドな街へと進化を遂げました。TOCビルの「異例の営業再開」という現在の姿を、利便性を享受できるチャンスと捉え、ご自身のライフプランに合わせた物件選びを進めてみてください。



株式会社 ロイヤルホーム

五反田・目黒・大崎・戸越エリアの不動産のことなら、お気軽にご相談ください。

TEL:03-3495-2701

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