
ガッツポーズや最初はグーはあの人が発祥!?有名人が広めた日常のポーズや掛け声
- 1. 日常で使うポーズや掛け声の「発祥」を知る面白さ
- ・なぜあの有名人がきっかけに?メディアとポップカルチャーの影響力
- ・諸説ある歴史と「公式とされる説」の見分け方
- 2. 「ガッツポーズ」の発祥と広まりの歴史
- ・ガッツ石松氏が勝利時に見せた姿説(1974年・WBC世界ライト級タイトルマッチ)
- ・ボウリング専門誌やゲーム業界における先行使用説
- ・海外での扱いと「ガッツポーズ」が和製英語である理由
- 3. じゃんけんの定番「最初はグー」の誕生秘話
- ・『8時だョ!全員集合』で志村けん氏が生み出したお笑いコント
- ・全国の子供たちへ爆発的に普及した理由と当時の流行文化
- ・「最初はグー」導入前と導入後のじゃんけん文化の変化
- 4. 写真撮影の王道「はい、チーズ」と「ピースサイン」
- ・「はい、チーズ」は雪印乳業のCMがきっかけ
- ・「ピースサイン」を日本に広めた井上順氏とカメラメーカーのCM
- ・ベトナム戦争下の反戦運動から写真のポーズへの変遷
- 5. 遊びとゲームの定番「あっち向いてホイ」の由来
- ・桂三枝(現:六代 桂文枝)氏と『ヤングおー!おー!』でのゲーム企画
- ・伝統的な座敷遊び「拳遊び」や「野球拳」からの進化
- ・関西の演芸文化から全国区のバラエティ番組へ
- 6. まだある!有名人・メディアが広めた意外な日常のポーズ・言葉
- ・「シェー」(おそ松くん)と昭和の子供たちの空前絶後ブーム
- ・「アイーン」など志村けん氏が遺したボディランゲージ
- ・スポーツ選手のアクション(五郎丸ポーズ、ペッパーミル等)の拡散構造
- 7. なぜ有名人が作ると全国に一瞬で広まるのか?
- ・テレビ黄金期における共有体験の強さ
- ・コミュニケーションの円滑化ツールとしての「ポーズ」の役割
私たちが日常で何気なく使っているポーズや掛け声。実は、その多くが特定の有名人やテレビ番組、話題のCMをきっかけに全国へ広まったものです。発祥の背景を知ると、昭和から平成にかけた日本のポップカルチャーの勢いとメディアの影響力を強く感じられます。この記事では、ガッツポーズや「最初はグー」をはじめとする、有名人が広めた日常の定番ポーズ・言葉の由来を網羅的に解説します。
1. 日常で使うポーズや掛け声の「発祥」を知る面白さ
なぜあの有名人がきっかけに?メディアとポップカルチャーの影響力
現代のようにSNSやインターネットが普及していなかった昭和の時代、国民の娯楽の中心はテレビとラジオ、そして雑誌でした。特にゴールデンタイムのバラエティ番組やスポーツ中継は、日本中が同時に同じ映像を目にする「巨大な共有体験」を生み出していました。スター選手の一挙一動や人気芸人の一言が、翌日には学校や職場の共通言語となる構造が確立されていたのです。
諸説ある歴史と「公式とされる説」の見分け方
こうした日常のポーズや言葉の由来を調べる際、しばしば複数の説(諸説)が存在します。これは「誰かが自然に使い始めていたもの」を「影響力のある有名人がメディアで披露して爆発的に拡散させた」というパターンが多いためです。「発祥(最初に作った人)」と「波及(全国に広めた人)」が異なるケースも多いため、歴史的資料や本人の証言、メディアの発行記録などを複合的に照らし合わせることが重要です。
2. 「ガッツポーズ」の発祥と広まりの歴史
ガッツ石松氏が勝利時に見せた姿説(1974年・WBC世界ライト級タイトルマッチ)
「ガッツポーズ」の由来として最も広く知られているのが、元プロボクシング世界チャンピオンのガッツ石松氏です。1974年4月11日、WBC世界ライト級タイトルマッチで王者のロドルフォ・ゴンザレス選手に奇跡的なKO勝ちを収めた際、ガッツ石松氏が両手を高く掲げて歓喜した姿を、翌日のスポーツ紙やボクシング専門誌が「ガッツポーズ」と表現しました。この鮮烈な印象とともに、言葉とアクションがセットで一般に浸透していきました。
ボウリング専門誌やゲーム業界における先行使用説
しかし、言葉としての「ガッツポーズ」は、ガッツ石松氏の偉業以前から存在していた記録があります。1972年の『週刊ボウリングジャーナル』等の専門誌において、ストライクを取った際のポーズとして「ガッツポーズ」という記述が確認されています。また、当時流行していたピンボールゲームの機種名「ガッツ」に由来するという説も存在します。言葉自体はボウリングブームなどで局所的に使われており、それをガッツ石松氏の劇的な勝利と名前に掛けて全国的な国民的言葉に昇華させたというのが有力な見方です。
海外での扱いと「ガッツポーズ」が和製英語である理由
なお、「ガッツポーズ(Guts Pose)」は完全な和製英語です。英語圏で両拳を握りしめて喜びを表す動作は "Fist pump" や "Victory pose" と呼ばれます。英語の "Guts" は「内臓、ガッツ、ガッツがある(根性がある)」という意味ですが、ポーズと組み合わせて使う表現としては通じないため、海外旅行や国際交流の場では注意が必要です。
3. じゃんけんの定番「最初はグー」の誕生秘話
『8時だョ!全員集合』で志村けん氏が生み出したお笑いコント
じゃんけんをする際、全員でタイミングを合わせるために掛け声をかける「最初はグー」。この文化を全国に広めたのは、国民的お笑いタレントの志村けん氏です。TBS系の伝説的お笑い番組『8時だョ!全員集合』のコント内で、志村氏が「最初はグー、またまたグー、いかりや長介頭がパー、正義は勝つ!」といったフレーズとともに使用したことで一躍話題となりました。
このフレーズが生まれたきっかけについて、志村氏は生前、飲み会での出来事を語っています。酒の席でみんなが好き勝手にじゃんけんをして一向にタイミングが合わないため、「一回『グー』で揃えよう!」と提案したことが始まりでした。この場の工夫をコントに持ち込んだところ、大爆笑を生む仕掛けとなったのです。
全国の子供たちへ爆発的に普及した理由と当時の流行文化
当時、『8時だョ!全員集合』は最高視聴率50%を超えるモンスター番組でした。土曜の夜に番組を見た全国の子供たちが、月曜日の学校の休み時間や放課後の遊びで一斉に真似をし始めました。子供たちの口コミとコミュニケーションを通じて、北海道から沖縄まで瞬く間に「最初はグー」が定着していったのです。
「最初はグー」導入前と導入後のじゃんけん文化の変化
「最初はグー」が誕生する前は、地域や集団によって「じゃん・けん・ポン」「いん・じゃん・ほい」などタイミングの取り方がバラバラで、あいこが続いてなかなか勝負が決まらないことも珍しくありませんでした。全員が「手を出さずにグーを提示する」という準備段階を挟むことで、参加者のリズムが完全に同期し、公平かつスムーズにゲームを進められるという実用的な利点があったことも、この掛け声が永続的に定着した大きな理由です。
4. 写真撮影の王道「はい、チーズ」と「ピースサイン」
「はい、チーズ」は雪印乳業のCMがきっかけ
写真を撮る際の合図である「はい、チーズ」。このルーツは英語圏の "Say cheese!" です。「チーズ」と発音する際に口元が自然と横に広がり、笑顔(smile)の形になることから使われ始めました。
日本にこの習慣を持ち込んだのは、1963(昭和38)年に放映された雪印乳業(現:雪印メグミルク)のプロセスチーズのTVCMだと言われています。CM内で外国人のモデルがカメラに向かって「Say cheese!」と呼びかけるシーンが話題となり、写真撮影時の決めゼリフとして日本全国に普及しました。企業のマーケティングが文化として定着した典型例と言えます。
「ピースサイン」を日本に広めた井上順氏とカメラメーカーのCM
写真撮影の定番ポーズである「ピースサイン(Vサイン)」を日本で一気に広めた人物は、タレントの井上順氏です。1972(昭和47)年、小西六写真工業(後のコニカ、現コニカミノルタ)のカメラ「サクラカラー」のCMに出演した際、井上氏がアドリブで「お持ちになりたい写真機」のフレーズとともにピースサインを披露しました。
井上氏自身は、当時流行していた海外の音楽カルチャーや反戦運動からVサインを知り、何気なくカメラに向かってやったと回想しています。この軽快で親しみやすいポーズがCMを通じて全国に届き、特に若者や女性の間で写真撮影時のポーズとして一気に定番化しました。
ベトナム戦争下の反戦運動から写真のポーズへの変遷
元々、人差し指と中指を立てるVサインは、第二次世界大戦中にイギリスのチャーチル首相が用いた「Victory(勝利)」の掲出が始まりです。その後、1960年代後半のベトナム戦争反対運動において、アメリカのヒッピー世代やアクティビストたちが「Peace(平和)」の象徴として使い始めました。世界的な政治的・社会的メッセージであったシンボルが、日本のポーズカルチャーとCMメディアを通過することで、ポップで親しみやすい「笑顔の写真ポーズ」へと変容を遂げた歴史は非常に興味深いポイントです。
5. 遊びとゲームの定番「あっち向いてホイ」の由来
桂三枝(現:六代 桂文枝)氏と『ヤングおー!おー!』でのゲーム企画
じゃんけんから派生した大人気ゲーム「あっち向いてホイ」。この遊びを考案し、世に送り出したのは落語家の桂三枝(現:六代 桂文枝)氏です。
1968年から毎日放送(MBS)系列で放送され、関西を中心に若者から絶大な支持を集めたバラエティ番組『ヤングおー!おー!』内のコーナー「コーナーゲーム」において、三枝氏が考案したゲームとして披露されました。じゃんけんに勝った方が指を指し、負けた方が顔を向けるというシンプルながら心理戦要素のあるルールが好評を博し、番組の名物企画となりました。
伝統的な座敷遊び「拳遊び」や「野球拳」からの進化
日本には古くから、花街や座敷で親しまれてきた「拳遊び(本拳、虫拳など)」や「野球拳」のように、手や顔の動作を使って勝敗を競う伝統的な遊戯文化が存在していました。「あっち向いてホイ」もこうした日本の伝統的な対面型コミュニケーション遊びの系譜を引き継ぎつつ、テレビ番組というメディアに合わせてルールを極限までシンプルかつスピーディーに洗練させたものと言えます。
関西の演芸文化から全国区のバラエティ番組へ
当初は関西ローカルのトレンドでしたが、『ヤングおー!おー!』が全国ネット化されるにつれて、日本中の子供たちや学生の間へと波及しました。ルール説明がほぼ不要で、誰でもその場ですぐに遊べる手軽さから、今や修学旅行や宴会、バラエティ番組の定番ゲームとして完全に定着しています。
6. まだある!有名人・メディアが広めた意外な日常のポーズ・言葉
「シェー」(おそ松くん)と昭和の子供たちの空前絶後ブーム
赤塚不二夫氏の漫画『おそ松くん』に登場するキャラクター「イヤミ」が行うポーズ「シェー」。片足で立ち、手首をひねって顔と胸の前に出す独特のアクションは、昭和40年代の日本で社会的現象となりました。映画『ゴジラ』の作中でゴジラがシェーをしたり、当時の皇太子殿下(現上皇さま)がお茶目に行われたりと、老若男女を問わない爆発的なブームを巻き起こしたポーズの先駆けです。
「アイーン」など志村けん氏が遺したボディランゲージ
「最初はグー」に留まらず、志村けん氏は数多くのボディランゲージを日本人に残しました。顎を突き出して手を首元に寄せる「アイーン」や、変なおじさんの踊りなど、誰もが真似できるシンプルなポーズは、言葉の壁を越えて場を和ませる最強のコミュニケーションツールとして今なお親しまれています。
スポーツ選手のアクション(五郎丸ポーズ、ペッパーミル等)の拡散構造
現代においても、有名人によるポーズの拡散は続いています。ラグビーの五郎丸歩選手が見せたルーティンポーズや、2023年WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で大谷翔平選手やヌートバー選手が見せた「ペッパーミルパフォーマンス」などは記憶に新しいでしょう。現代ではテレビ報道に加え、SNSやTikTokなどを通じて、ポーズの広がりと模倣のスピードがさらに加速しています。
7. なぜ有名人が作ると全国に一瞬で広まるのか?
テレビ黄金期における共有体験の強さ
昭和から平成にかけて、有名人が発信したポーズやフレーズがこれほど強固に日本全国へ広まった最大の理由は「メディアの一元性」です。同じ時間帯に同じ番組を見ている人が何千万人もいたため、翌朝の学校や職場は「昨日のあのTVのポーズ」を再現する実験場となりました。この強力な共有体験が、個人の動作を「国民的習慣」へと昇華させたのです。
コミュニケーションの円滑化ツールとしての「ポーズ」の役割
また、これらのポーズや掛け声が一時的なブームで終わらず、何十年も受け継がれている理由は、実生活における実用性にあります。照れ隠しをしたいとき、場の雰囲気を和ませたいとき、みんなの行動のリズムを一つに合わせたいとき、これらのポーズは最高のアシストを果たします。有名人のユーモアから生まれたアクションは、私たちが円滑にコミュニケーションを図るための知恵として、今も日常の中に生き続けているのです。
