
盛土と切土の違いとは?崩壊メカニズムや盛土規制法の重要ポイントを解説
安全な住宅選びのための知識|「盛土・切土」のリスクと「盛土規制法」の重要ポイント
家を建てる・購入する際、物件の間取りや立地だけでなく、「その土地がどのように造成されたか」という地盤の安全性への配慮が不可欠です。
特に傾斜地や谷筋を開発して作られた宅地では、「盛土(もりど)」や「切土(きりど)」といった造成工事が行われているケースが多く存在します。本記事では、盛土と切土の基本的な違いから崩壊のメカニズム、全国の現状、そして近年施行された「盛土規制法」のポイントまで分かりやすく解説します。
1. 宅地造成における「盛土」と「切土」の基礎知識
斜面や傾斜のある土地に建物を建てる場合、敷地を平坦にするために土を削ったり盛ったりする工事(造成工事)を行います。この手法には大きく分けて「盛土」と「切土」の2種類があります。
盛土(もりど) 低い場所や傾斜地に外部から土を持ってきて高く積み上げ、平坦な敷地を作る工事です。谷間や斜面を埋めて作られることが多く、元の地盤の上に新しい土を載せる構造となります。
切土(きりど) 高い場所や山側などの斜面の土を削り取って平坦な敷地を作る工事です。元々の固い自然地盤がそのまま残るため、盛土に比べて締まった地盤が得られやすい特徴があります。
2. 「盛土」と「切土」の違いと崩壊のメカニズム
「盛土」と「切土」では、地盤の構造的な強さや災害時のリスクに大きな違いがあります。
地盤の安定性の違い
切土は長年かけて締め固まった本来の地盤をそのまま利用するため、比較的安定しており地耐力も高く保たれます。一方、盛土は人の手によって土を積み上げた地盤であるため、転圧(土を押し固める作業)が不十分であったり、締め固めが粗かったりすると、地盤沈下や崩壊のリスクが高まります。
崩壊のメカニズム
盛土が崩壊する最大の要因は「水」です。
雨水・地下水の流入
大雨や長雨によって盛土内部に多量の水が浸透すると、土粒子同士の結合が弱まり、土全体の重量が増加します。
滑り面の形成
元の地盤と盛土の境界部分に水が溜まることで摩擦力が低下し、「滑り面」が形成されます。
滑動崩落・流出
地震の揺れや自重に耐えきれなくなった盛土全体が滑り落ちる「滑動崩落(かつどうほうらく)」や土砂流出が発生します。特に谷筋を埋めた「谷埋め型盛土」や、斜面に土を盛った「腹付け型盛土」で発生しやすい傾向があります。
■ 全国における盛土の現状と課題
近年、大規模な盛土造成地や不適切な盛土による崩落リスクが全国的に問題視されています。国土交通省などの調査によると、その現状は以下の通りです。
全国の大規模盛土造成地:約51,000箇所
谷を埋めた谷埋め型や、傾斜地に土を盛った腹付け型の盛土造成地が全国に多数存在しています。
是正が必要な危険・不適切盛土:約1,100箇所
熱海市での盛土崩落災害を受けて実施された全国一斉総点検により、法令違反や不適切な施工、安全上の懸念から是正措置が必要とされる盛土が約1,100箇所抽出されました。
このような危険盛土に対しては、新たに施行された「盛土規制法」に基づき、各自治体による安全対策や規制の強化、行政代執行などが進められています。
3. 全国で施行された「盛土規制法」の重要ポイント
2021年に静岡県熱海市で発生した盛土崩落による大規模な土石流災害を受け、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制するため、従来の「宅地造成等規制法」が大幅に改正され、「盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)」として2023年5月に施行されました。
この法律における主な重要ポイントは以下の通りです。
① 規制対象エリアの全国的な拡大
従来の法律では農地や森林、宅地といった「土地の用途」によって規制が分かれていましたが、盛土規制法では盛土が行われれば被害が及ぶ可能性のあるエリアを都道府県知事等が「規制区域」として指定し、宅地・農地・森林を問わず一元的に規制します。
② 盛土工事の許可制と安全基準の強化
規制区域内で行われる一定規模以上の盛土や切土、土砂の仮置き等については、事前に都道府県知事等の許可が必要となります。施工時には擁壁の設置や排水施設の整備など、厳格な安全基準の適用が義務付けられます。
③ 土地所有者等の維持管理責任の明確化
盛土が行われた土地の所有者や管理者、占有者に対し、常時安全な状態に維持する責務があることが明確化されました。盛土に危険性が認められる場合、自治体から改善命令が出されることがあります。
④ 罰則の強化と行政代執行
許可を受けずに盛土を行ったり、改善命令に従わなかったりした場合の罰則が大幅に強化されました(最大で個人は懲役3年以下・罰金1,000万円以下、法人は罰金3億円以下)。また、危険性が極めて高く改善が見込めない場合には、自治体が代わって対策工事を行う「行政代執行」の規定も整備されています。
4. 安心して暮らせる住まいを選ぶためのチェックポイント
盛土や切土のリスクを踏まえ、現地確認や土地選びの際にご確認いただきたい実用的ポイントです。
大規模盛土造成地マップ・ハザードマップの確認
各自治体が公表している「大規模盛土造成地マップ」や「土砂災害ハザードマップ」で、検討中の土地が盛土造成地に該当していないか、土砂災害警戒区域等に含まれていないか確認しましょう。
現地での構造物(擁壁など)のチェック
水抜き穴が適切に設置されているか、擁壁に著しい亀裂や膨らみ(はらみ)がないか、擁壁の継ぎ目から土砂が流出していないかを実際に目で確かめることが重要です。
土地の履歴調査
過去の古地図や航空写真、地形図を調べることで、その場所がかつて谷筋や池・沼であったか、あるいは山を削った場所(切土)なのかを確認できます。
まとめ
住宅を購入・建築する際は、建物そのものの性能やデザインだけでなく、「足元の地盤がどのように作られているか」をしっかりと把握することが重要です。
全国で約51,000箇所存在する大規模盛土造成地や、是正が求められる危険盛土の存在を踏まえ、「盛土規制法」による最新の規制状況やハザードマップを活用しながら、安全性の高い土地選びを進めていきましょう。
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